2021年01月21日
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。
昨年はコロナ禍に翻弄された1年でした。そして、現在も未だその脅威に晒され続けています。私たちの日常生活も随分変わりました。もう当たり前となった感のある外出時のマスク着用もその中の1つですが、皮肉なことに、このことが矯正治療を始める契機になっているようです。
当院においても、この数ヶ月の間に治療を開始された患者さんがたくさん居られます。暗い話題が多い中、前向きなことに取り組まれる皆さんの思いにお応え出来るよう、より一層感染対策に留意しながら気を引き締めている次第です。
こんな時に少しネガティブな話題になってしまいますが(笑)、今回はあえて「矯正治療のリスク」について少し触れたいと思います。矯正治療のメリットだけでなく、多少なりともリスクを伴うこともご理解いただいたうえで治療を開始することが重要と考えております。
1.歯根吸収
歯に矯正力をかけると、歯根の先が少しずつ短かくなることがあります。これが歯根吸収と呼ばれるものです。実はこの現象、微細なレベルではほとんどの歯根に生じていると言われますが、レントゲン写真などで視認出来るまでのレベルになると問題です。歯の寿命を縮めることになるからです。原因や好発部位に関する報告はいくつか存在しますが、吸収のメカニズムについては不明なことが多く、事前の予測や事後の対処がほぼ不可能なのが厄介です。気をつけることとしては、私たち術者側では、歯に過大・長期間の力をかけるのを避けること、患者さん側では、清潔に努めて炎症などの増悪要素を作らないことなどが挙げられます。
2.う蝕・歯肉炎・歯周病
矯正装置のような異物が口腔内に常在すると、自浄作用が働きにくくなって衛生状態が悪くなりがちです。衛生状態が悪化すると、口腔内の細菌叢のバランスが崩れて特定の細菌が増殖し、これらがう蝕・歯肉炎・歯周病を引き起こすと考えられています。対策としては、清潔にすることに尽きます。具体的には、毎食後のブラッシングを行うこと、歯科医院での定期的なメンテナンスを受けること、偏った食生活を避け、ある程度の自浄作用が期待できる口腔内環境をつくること、などが挙げられます。
3.顎関節の不調
矯正治療を開始すると、開閉口時に顎の関節部に雑音や痛みが出ることがあります。大半の場合では、時間の経過とともに緩解し、大事に至ることは稀なのですが、重度になると、開口するのも辛い、所謂、顎関節症と呼ばれる状態にまで進んでしまうことがあります。歯列・咬合と顎関節症との因果関係については、これもまた、未だよく分かっていません。また、顎関節は四肢の関節とは異なり、複雑かつ独特の形態・動きを有するため、積極的な治療を行いにくい部位でもあるのです。前述の通り、大半の場合では大事に至りませんから、大開口(大きく口を開く)や硬いものをかじるといった負荷のかかる動きを控え、ゆっくり臼歯で咀嚼する習慣を身につけるなどの方法で対処するしかありません。
上記リスクに共通することは、①発現のメカニズムが解明されていないこと、②有効な予防法や治療法がないことで、このことが矯正治療に不安な影を落とします。症状によっては、治療計画の変更が必要な場合もあります。
高頻度に併発するものでないことがせめてもの救いなのですが、これらのリスクを有効に回避出来る手段が近いうちに見つかることを期待しています。
2020年12月29日
こんにちは、院長の井上です。
近年のデジタルテクノロジーの発展は、私たちの生活をより便利で快適なものにしてくれています。(もちろん、功罪はありますが。。。)
デジタル機器に関する報道は、新聞・TV・雑誌で毎日のように取り上げられ、携帯電話やスマートフォンはもとより、AI(人工知能)、5G(第5世代移動通信システム)、IoT(モノのインターネット)、オートパイロット(車の自動運転)など、一昔前では空想上のものとしか思えなかったことが、日常生活においてキーワードとして扱われるまでになりました。
歯科医療の領域では、電子カルテの運用に始まり、デジタルカメラやデジタルレントゲン機器の普及、工業用CAD/CAM技術を応用した歯科技工、さらには3Dの光スキャンによる歯型採りといった形で、診療室での治療の場にまで入り込んで来ています。とりわけこの光スキャン、口腔内スキャナーを用いた光学印象とも称され、既に導入されている歯科医院もたくさん存在します。
今回は、遅ればせながら、この私も口腔内スキャナーに触れる機会がありましたので、本稿においてその概要と所感を述べたいと思います。
今回ご紹介するシステムは、
米国アラインテクノロジー社製の「iTero」です。
以下に示すのは、販売元が説明している最新バージョンの概要です。
「iTeroエレメント5Dは、口腔内スキャナーとして初めて近赤外光画像(以下、NIRI)技術を搭載し、歯牙の内部構造をリアルタイムでスキャンできるハイブリッドな性能をもった画期的な口腔内スキャナーです。NIRI技術によって、電離放射線を暴露することなく、歯牙構造を可視化し、隣接面のう蝕の早期発見を補助します。また、iTero エレメント5Dには、NIRIや口腔内カメラの他にも先進的な視覚化機能として、タイム・ラプス 、アウトカム・シミュレーター、プログレス・アセスメントも標準装備されています。
【タイム・ラプス】
患者様が気づきにくい口腔内の変化を強調して表示することにより、自分の歯がどのように移動していくかを視覚的に確認することができます。
【アウトカム・シミュレーター】
アライナー矯正治療によって期待できる治療結果を患者様に示します。患者様はアライナー矯正治療後に自分の歯がどうなっているのかをビジュアルで確認できます。
【プログレス・アセスメント】
治療計画に対して、実際の矯正治療の進捗状況を患者様に表示し、診療時に期待できる成果について話し合うことができます。
iTero エレメント5Dが持つ機能を最大限に活用することにより、患者様にさらに多くの視覚情報を提供することができ、画像を見ながらの患者様とのコミュニケーションは、治療への理解や他の治療のきっかけとすることができます。」
要するにこれが、新しい「歯型採り(印象採得)」です。従来(現在でも多くの場合)では、粘土のような材料(印象材)をトレーに盛り付け、それを患者さんのお口の中に押し付けて歯型を採り、そこに歯科用石膏を流し込んで作業(観察)用の模型を製作していました。この模型が様々な歯科治療の基本となる資料になるのですから、それを製作するための印象材や石膏の改良はずっと進められて来ました。しかしながら、このハイテク技術は、そんな地道な努力を吹き飛ばすかの如く、デジタルデータを元に実体をいきなり3Dモデルとして画像に表示してしまうのです。それも光センサーを先端に内蔵したプローベ状の口腔内スキャナーを、患者さんのお口の中でぐるりと周回させるだけの作業で。
実際にデモ機を使わせてもらいましたが、非常に扱いやすかったです。習熟度を問われるような難しい作業はほぼありません。スキャンを進めると、精密な歯列の3Dモデルがモニター上にリアルタイムで表示されていきます。読み取りが十分でない部分については色調を変えて教えてくれ、その部分を再スキャンすることでキレイに補正してくれます。圧倒的に感動しました(笑)。ものすごいテクノロジーです!
光学印象のメリットは・・・
①正確無比な再現性
印象材を用いた方法では、印象材のみならず石膏の変形や経時的寸法変化などがどうしても生じるので、得られる作業用の模型の精度には限界がありました。しかしながら、光学印象では、口腔内の解剖学的形態をデジタルデータ化して直に3Dモデルを構築するので、その精度たるや桁違いに正確なのです。
②安全で比較的快適
印象材を用いた歯の型取りは、患者さんにとって不快なものです。咽たり、誤飲してしまうこともありますが、光学印象ではその心配はありません。また、レントゲン撮影とは異なり、人体に有害な物質に曝されることもありません。
③デジタルソリューション
遠隔地の歯科医師や歯科技工士との情報交換が正確・迅速かつ容易になります。蓄積されたデータはクラウド上にストレージされるので、紛失や破損のリスクが少なく、膨大になれば今後の治療法の開発・発展に大いに貢献してくれるでしょう。また、必要な時に3Dプリンターを介して模型として取り出すことが可能なため、保管庫のような大きなスペースも必要ありません。
いかがでしたか。これは、非常に魅力的なシステムです。価格は、高価な輸入車1台分といったところですが、個人的には、かなりのお買い得品だと言わざるを得ません。ぜひ購入したいなぁ。。。
2020年11月5日
こんにちは、院長の井上です。
前々回のブログで「アライナー矯正」について通覧を掲載致しましたが、その記事を書くにあたり、必ずと言っていいほど出て来た用語がありました。それが「加速矯正」です。歯の動きを加速させるなんて、本当にそんなことが可能なのだろうか・・・
今回はその加速矯正について少し調べてみました。
日本ではさほど認知度の高くないこの治療法ですが、欧米では、かなり一般的になっているようで、多くの基礎研究や治験例の報告がなされています。今年の第79回日本矯正歯科学会大会においても「accelerated tooth movement」というトピックで取り上げられ、講演もありました。ちなみに巷では「スピード矯正」と呼ばれていることもありますが、これは正式な学術用語ではありません。
理屈としては、要は周囲の骨の代謝を促進して歯の動きを速めようというもので、古くは、骨にあえて侵襲(平たく言えば傷です)を加え、その治癒機転を利用するものから、最近では、光や振動を与えて細胞の活性化や組織修復・創傷治癒効果の上昇に期待するといったものがあるようです。以下にその具体例を紹介致します。
1.光を照射するもの:『オーソパルス』
<https://www.orthopulse.comより転載>
『オーソパルス』は、シリコンに埋め込まれたLEDが歯の周辺組織に近赤外線を照射し、細胞内部のミトコンドリアを活性化することで歯の移動を速めることができるとされる装置です。ある研究によれば、動的治療期間を最大で66%短縮できたとも報告されています。カナダのバイオラックス・リサーチ社が開発したもので、2015年にFDA(米国食品医薬品局)に承認されています。
トレー状のデバイスを口にくわえて10分/日のペースで使用し、スマートフォンで使用状況のモニタリングや治療データの蓄積を行います。使用時の痛みや違和感はほぼなく、副作用の心配もないと説明されています。
2.振動を与えるもの:『アクセルデント』
<https://acceledent.comより転載>
『アクセルデント』は、歯の周辺組織に微弱な振動を与え、骨の代謝を向上させることで歯の移動を速める装置です。アメリカのオーソアクセル・テクノロジーズ社が開発したもので、こちらもFDAに承認されています。
デバイスの形状やスマートフォン活用という点も、前述の『オーソパルス』と似ていますね。こちらは20分/日ほど使用するようです。そう言えば、整形外科領域で骨折の治療に超音波治療器が用いられていますよね。患部に一定の振動を与えることで、治癒が早まること、また、治癒した骨折部位が丈夫になるなどの報告が見られます。矯正歯科領域にも応用されたということでしょう。
現在では、歯の移動に適した周波数についても言及され始めているようで(下の写真の「VPro」)、装置のバリエーションも増えていくのかも知れません。
<https://propelorthodontics.comより転載>
3.侵襲を加えるもの:『コルチコトミー(皮質骨骨切開術)』、『プロペル』
『コルチコトミー(皮質骨骨切開術)』
『コルチコトミー(皮質骨骨切開術)』とは、歯を支える骨の硬い表面にスジ状の切れ込みを入れ、創傷が治癒する過程で骨代謝が高まることを利用して歯を動きやすくする方法です。個人的には、この方法については以前に何度か文献でも目にしたことがあり、知識として知ってはいました。しかし、かなり侵襲の大きい観血処置ですから、術後の感染症のことなど考えると、診療室で日常的に行うには怖過ぎます(笑)。
『プロペル』
<http://propelorthodontics.comより転載>
『プロペル』とは、歯肉の切開・剥離をすることなく歯肉と骨に小さな穴を開けるドライバー状の器具です。歯の動きを速める機序は、『コルチコトミー』と同様で創傷治癒過程における代謝の活性化であるようですが、こちらは侵襲が非常に小さい分、体への負担が少なく、術後の感染症や腫れ・疼痛などの心配が殆どありません。1回の施術で効果の持続は3~4ヶ月間といわれ、症例によっては繰り返し行う必要があります。アライナーだけでなく、マルチブラケット装置(ワイヤーの矯正装置)との併用も可能です。
いかがでしたか。「加速矯正」の効果・効能については、現段階ではまだはっきりと分かっていないようです。矯正治療は、患者さんにとって根気と忍耐が要求されるたいへんな治療です。治療期間の短縮がもたらす福音は何ものにも代え難く、私たち矯正医にとっても悲願です。データの蓄積と研究が進み、この「加速矯正」がより現実性の高いものになれば、まさに夢のような治療法になりますね。
2020年10月28日
こんにちは、院長の井上です。
先日、自宅の本棚を整理していると面白い書籍が出て来ました。タイトルが「DENTISTRY・AN IRRUSTRATED HISTORY」という歯科の史料をたくさん掲載した本で、かつてどこかの小さな書店で見つけたものです。買ったことすら記憶から消えていましたので、しばらく整理の手を止めて読み耽ることになりました(笑)。内容を一部お見せしたいと思います。
この写真は、紀元前9世紀のマヤ人の古人骨だそうです。歯面に装飾としてヒスイやトルコ石を貼り付ける文化があったみたいです。石をはめ込む窩洞を形成する様子も示されていました。まるで火を起こしているみたいです(笑)。
摩擦熱で歯の神経が死んでしまいそうですね。この時代では、歯の治療や健康維持の概念はなかったとのことです、さすがに。
歯列矯正を示す資料です。下図は、歯の不揃いを修正する添え木状のスプリントです。1957年のもので、ワイヤーで絞めて歯を動かしたのでしょうね。なんとスペース確保のための小臼歯抜歯も行われたようです。
日本のものもあります。これは鎌倉時代の歯科医師が上顎の腫瘍の診査をしているところです。
このあとこの患者さんはどうなったのだろう。
徳川時代の木製のお歯黒人工歯です。なんと現代歯科でいうポストクラウンという形態に酷似しています。驚きです!
続いて1900年頃の診療チェアの写真です。思わず見入ってしまいました。とても重厚感があり、インテリアとして見れば現代のものよりいい?そんなことはありませんね(笑)。
最後は1905年当時のボルチモアのメリーランド大学病院の写真です。説明文によりますと、学生はフットペダルを踏んで切削器具を駆動しているそうです。写真右下の咬合器を手に持ったメガネの先生が指導医です。いつの時代でも指導医の先生は恐く見えます(笑)。
いかがでしたか?なかなか興味深い資料でしょう?他にもいろいろ掲載されていて、ずっと読んでいるうちに、本棚整理のことなどすっかり忘れてしまう私でした。
ではまた。
2020年09月2日
こんにちは、院長の井上です。
今回は、近年注目を集めているマウスピース矯正について言及したいと思います。
このマウスピース矯正、従来のブラケットとワイヤーを装着する所謂マルチブラケット治療とは異なり、患者さんご自身での着脱が可能なマウスピースを使用して歯列を整えるもので、アライナー矯正とも呼ばれています。
その情勢を見ますと、日本では、今のところアメリカのアライン・テクノロジー社のインビザラインと和田精密歯研のクリアアライナーに大別され、その他の数社が独自の呼称と「売り」を掲げて追随しているようです。以下にインビザラインとクリアアライナーを中心にアライナー矯正事情の概要を調べてみます。
Ⅰ.インビザライン
アメリカのアライン・テクノロジー社製のマウスピース型のカスタムメイド矯正装置です。最新のデジダル技術と多くの臨床データや特許を有する工場で、正確かつ再現性の高いマウスピースを製造します。1999年に「インビザライン・システム」から提供を開始し、世界100ヶ国以上の国々で700万人以上の患者さんがインビザラインで治療しているとされています(2019年6月現在)。日本では2006年より正式導入されました。
【治療方法】
①矯正歯科にて顔と歯の写真撮影、レントゲン撮影、デジタルスキャンや歯型を採り、
これらの資料・データをアライン・テクノロジー社へ送る。
②送られてきた資料・データを元に社独自の3D治療計画システムで治療計画を立て、
アライナー(マウスピース)を約20〜40を製造し、これらを矯正歯科へ送付。
③送付されたアライナーの装着を患者に指示する。歯の表面に歯と同色のノッチ
(小さな突起状の付加物)を付与したり、歯の幅を少し削ることもある。
④4~6週で歯の移動を確認しながらマウスピース装着を進める。
⑤治療終了。最後のマウスピースをリテーナー(保定装置)として使用することもある。
【適応症】
・非抜歯で治療可能な症例。
・抜歯しても歯根の移動が少ない症例。
・マルチブラケット治療との併用が可能な症例。
・1日20時間以上マウスピースを装着できる方。
【適応できない症例】
・上下の顎の位置が大きく前後左右にずれている症例。
・歯の不揃いがとても強い症例。
Ⅱ.クリアライナー(アソアライナー)
東京に本社のあるアソインターナショナル(2010年10月からは和田精密歯研)が製造するアライナー矯正装置です。インビザラインと同様の透明のマウスピース形状です。
【治療方法】
①矯正歯科にて顔と歯の写真撮影、レントゲン撮影、デジタルスキャンや歯型を採り、
これらの資料・データを技工所へ送る。
②技工所で「ソフト」「ミディアム」「ハード」の3種類のマウスピースを製造し、矯正歯科へ送付。
③7〜10日間で順番に「ソフト」「ミディアム」「ハード」の装置を変えて装着する(1ステップ)。
④ステップ毎に歯型を取って模型を技工所へ送り、新しいマウスピースを製造。
この工程を何度も繰り返し、歯の移動を確認しながら治療を進める。
⑤治療終了。リテーナーにはハードタイプのアライナーを使用する。
【適応症】
・基本的にはインビザラインと同じ。
・1日17時間以上マウスピースを装着できる方。
Ⅲ.両者の相違点
クリアアライナーでは、石膏模型上の歯を手作業で動かして製作されたセットアップ模型を元にアライナーを製作するのに対し、インビザラインでは、3Dシミュレーションソフトによって正確な歯の動きが設定され、その結果がCAD/CAM(コンピューターを利用し、設計・生産を一貫して行う技法)を用いた光造形技術によって、アライナー上に正確に再現されます。
アライナーの精密性ではインビザラインに優位性があり、このことが部分矯正の症例だけでなく、臼歯などを全体的に動かす全体矯正の症例にもある程度適用可能にしていると考えられます。
クリアライナーでは、前歯だけを動かす部分矯正に限定して使用されることが多いようで、厚さの異なるアライナーを使用するのが特徴的です。
両者ともアライナーの外観は透明で、厚さもさほど変わらないようですが、インビザラインでは歯のみを覆うのに対し、クリアライナーでは歯と歯肉の一部を覆う形態をしています。
Ⅳ.その他のアライナー矯正
*ケンライン
・フルデジタル診断で設計するマウスピース矯正システム。
・インビザラインに似ているが、ケン・デンタリックスという日本企業が提供する純日本製のシステム。
・インビザラインとの違いはアライナーの形態(歯茎までを覆うタイプ)。
*スターアライン
・部分矯正向きとされる。
・元々はドイツのショイデンタル社が開発したマウスピース矯正技術で、インビザラインによく似ているが通院頻度が少ない(1年以内に治療が終わりそうな軽微な症例に限定している模様)。
・アライナーの形態は、歯茎まで覆うタイプ(歯槽骨にもしっかり力が加えていけそうとある)。
*SmileTRU(スマイルトゥルー)
・レベル1(前歯部のみの移動で治療可能な症例)とレベル2(小臼歯までの移動が必要な症例)のみを治療対象としている。
・3Dデータを使って「診断・設計は米国、製作は日本」を掲げる同社サービスには、三井物産が歯科技工所と組んで30%を出資。大手商社が参入を果たしたことが話題に。
*クリアコレクト
・2006年に歯科医師のWillis Pumphreyと歯科技工士のPaul Dinhによって開発され、その後改善を重ねて米国シェア№2へ成長。
・1日22時間のアライナー着用。アタッチメントや専用の治療計画ソフトもあり。
・スキャナは3shape社のTRIOS3でSTLと呼ばれる立体画像データの保存形式に対応しているスキャナであれば対応可(インビザラインでは現在は自社のスキャナi Teroのみ)。
・アライナーの形態は、歯茎に2mmほどかかるくらいをカバーしたもの(インビザラインよりやや大きい)。
・治療の全体的システムとしては、アライナー配送方法がステップ毎という点を除いてはインビザラインと同じ。
*シュアスマイル
・歯科医療製品のデンツプライ・シロナ社によるアライナー矯正。システム概要はインビザラインやクリアコレクトと似ている。
*インシグニア
・歯科矯正材料のオームコ社によるアライナー矯正。システム概要はインビザラインやクリアコレクトと似ている。
*オペラグラス
・前歯を主体とする軽度の歯列不正や矯正後の後戻りの治療などに適している。
*キレイライン
・部分矯正に徹している。
・「患者さんの満足するところまで」、「安価な治療費」のアピールが特徴的。
*スマイルダイレクト
・アメリカの新興企業スマイルダイレクトクラブが提供するアライナー矯正。
・自宅で歯列矯正できるキットを直接患者へ販売する。
・2019年9月ナスダック市場へ上場。歯科医師側の猛反発を受けながらも急成長している。
・アメリカ矯正歯科学会は、歯科医師の診断とモニタリングがないこの治療法を危険視し、同社サービスを利用しないよう呼びかけている。
いかがでしょうか。ざっと調べただけでもこれだけの種類のアライナー矯正を見つけることができました。まだ他にもいくつか存在するようで、とても興味深いですね。
私たち治療をする側としましては、この新しい治療法を積極的に取り入れながらも、その特性と限界を理解し、予知性の高いものにする工夫と努力が必要になると考えております。
2020年08月4日
こんにちは、院長の井上龍治です。
今回は、矯正治療に用いられる代表的な装置である『マルチブラケット装置』(矯正と言えばみなさんがすぐに連想される、あのワイヤーの装置のことです)について簡単に解説いたします。
治療開始を検討されている方への一助となれば幸いです。
◆構造と種類
上下の歯列弓の形態と調和、咬み合わせを整える固定式の装置です。最も多くの症例に使用され、ワイヤーと個々の歯に取付けられたブラケットから構成されます。ブラケットがたくさん装着されることからマルチブラケット装置と呼ばれています。
歯とブラケットは歯科用ボンドで接着され、ブラケットに付与されたスロットと呼ばれる溝にワイヤーを通して結紮(けっさく)し、ワイヤーの復元力を利用して歯列弓を整えます。
当院では、目立ちにくい歯冠色のプラスチックブラケットを歯の表側に取付けるクリアタイプの装置の他に、スロットとワイヤーに生ずる摩擦を最小に抑えることで歯がスムーズに動くとされるデーモンクリア、さらに歯の裏側に金属ブラケットを取付けるため外からは見えないリンガルタイプの装置を使用しています。
実はこの装置の原型となるもの、エッジワイズ法といって1920年代にアメリカのE.H.アングルという歯科医師によって開発されたものです。概ね1世紀も昔のことです(笑)
当時は、現在ほど接着技術が発達していませんでしたので、金属のブラケットを溶接した金属バンドを個々の歯に装着し、その外観からフルバンドとも呼ばれていました。患者さんも苦痛だったでしょうし、施術する矯正医もたいへんな苦労をされていたことと想像します。
◆用いるワイヤー
マルチブラケット治療に用いられるワイヤーは、硬さ・復元性により2種類に大別されます。
1つはニッケルやチタンなどを主元素とする合金製で形状記憶の性質を持つもの、もう1つはステンレス製で一定の硬さを持つものです。また、断面の形状にも丸型と角型があり、太さもそれぞれに数種類あります。これらを治療の段階に応じて使い分けます。
当院では、クリアタイプ(デーモンクリア含む)の装置に組合せるものとして、審美性に長けたホワイトワイヤーを多用しています。このホワイトワイヤーとは、金属ワイヤーに白いコーティングを施したものです。コーティングが少し剥がれることはありますが交換可能です。
◆適応症
ほとんどすべての歯列不正に適用されますが、装置の種類によって長所短所があります。
◆クリアタイプ(デーモンクリア)
現在もっともポピュラーな装置で、当院でもお勧めしています。見た目は、後述のリンガルタイプにはやや劣るものの、ホワイトワイヤーを併用することでかなりスマートなものに改善されています。
もちろん症例にもよりますが、動的治療期間も3年前後に収まる場合が多く、とくにデーモンクリアではさらに短期間で済むこともあります。また、こまめにブラッシングすることでブラケットの変色も抑えることが出来ます。
◆リンガルタイプ
外見からはほとんど見えないのがこの装置最大のウリです。しかしながら、一般的には治療期間が長くなりがちです。裏側から力をかけて歯を動かすこと自体に力学的に不利な要素が多く、このことが治療を技術的に難しくしています。装置の装着や処置にも労力と時間を要するので、治療費はどうしても高額になります。
前歯の咬み合わせが極端に深い症例や、重症度の高い歯列不正には適用困難な場合があります。また、ブラッシングが難しいことも難点に挙げられます。これらの短所を少しでも補うため、下の歯列には歯の表側にクリアブラケットを取付けるハーフリンガルという治療法(コンビネーションタイプ)を採ることがあります。
2019年03月29日
Milk toothのお話です。
歯科衛生士の木村です。
今日は、Milk toothについて、お話したいと思います。
Milk toothって可愛い響きですよね。乳歯のことです。
だいたい生後6カ月頃から生え始め、2才半から3才頃までに20本生え揃います。
ほぼ生えた順番で6才頃から乳歯が抜けて、永久歯に生え変わります。
日本では、乳歯が抜けると「下の歯は屋根の上に 上の歯は縁の下に投げる」習慣が
古くからありますが、これは、次の永久歯がしっかり生えるようにとの願いが
込められた伝統のようです。
一方、ドイツでは抜けた乳歯を枕の下に入れておくと、小さな歯の妖精がこっそり歯を
もらいに来て、コインや小さなプレゼントに交換してくれるという言い伝えがあるようです。
このような習慣は、ドイツだけではなくアメリカやオーストラリアなど、さまざまな国にも
あるようです。
夢のある習慣ですよね。
最近では、マンションが普及して住宅事情の変化にともなって、
昔からの習慣がなくなりつつあるようです。
可愛い我が子の成長の記念として、大切に取っておく親御さんも増えているようです。
雑貨屋さんでもかわいいデザインのトゥースケースもあります。
一度、雑貨屋さんをのぞいてみてください。
お子さんの成長記録にぜひぜひ・・・
私も我が子(3人)の乳歯は、記念として残しています。
2019年03月21日
はじめまして。
昨年の9月から勤務させて頂いている受付の守田と申します。
趣味はお城巡りで日本史が好きです。
去年は大阪城へ行って、天守閣には登らずに石垣だけ二時間ほど見て帰ってきました(笑)
今は寒いので出掛ける機会も減ってしまいましたが、春になったらまた見に行きたいです。
まだまだ未熟ですが笑顔で患者さんをお迎えするように心掛けています。
どうぞよろしくお願い致します。
2019年03月15日
こんにちは、歯科衛生士の小田垣です。
今日は少し難しい?お話です。
矢作直樹氏(元医師で教育者・東京大学名誉教授)のお話の一部分です。
ある50才の男性・今は陸上競技選手のトレーナーで37才までスタントマンをしており、
この仕事の最後の日、14メートル下へ飛び降りた時、下半身がマットから出てしまい、
脊髄損傷・下半身麻痺。
大変この先不安になったと同時に生きている事に感謝し、
自分の体に『今度こそ休めるからね』と非常に強い感謝の気持ちが起こってから
ふっと気付くと足先・足首・膝と動く様になったとの事。
感謝が非常に大きなエネルギーだそうです!
矢作先生も職業柄不規則で37才で白髪が出来始め、無意識に感謝の念を体に送る様に
なると白髪も減り若返ったそうです。
毎朝、感謝の念を体に送ると良いそうですよ。
私も毎朝、感謝の念を送る様にしています。多少、老化を食い止められるでしょうか。
がんばります!!
2019年03月6日
こんにちは
この夏お休みをいただき、カナダに行ってきました。
カナダといえば国旗にも描かれているメープルが名物ですよね。
朝から大量のメープルをパンにつけて食べ、
アイスもメープル味、サーモンにもメープル(醤油感覚!?)
とスイーツからおかず系までメープル三昧な国でした。
日本でメープルといえば、甘ったる~いシロップのイメージですが
(あれはパンケーキシロップで水と砂糖が主成分)、
カナダ産メープルは甘さ控えめでサラサラしています。
職業柄、虫歯になりやすいのではないか?と思い調べてみました。
すると <<<他の砂糖よりショ糖が少ない>>> とのこと。
つまり、虫歯の原因になりにくい。ということなのです!
他にもカロリーが低い、栄養価が高い、砂糖やハチミツを与えてはいけない赤ちゃんにも
安心して使えるなどのいいことが沢山ありました!
もちろん摂りすぎは虫歯になってしまいますが、みりんや砂糖の代わりとして、
料理に用いるなど利用できそうです。
美味しい物をたくさん食べられるよう、歯の検診、クリーニングも受けましょう!